自民・石破氏に芽生えてきたチャレンジャー魂

 「ポスト安倍」を狙う自民党の石破茂元幹事長が存在感を出そうとしている。安倍晋三首相による憲法9条に自衛隊の存在を明記する改正案の提起に違和感を表明したのに続き、26日には政権を揺るがしかねない学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設計画を巡る前川喜平前文部科学事務次官の発言に対し、「意味がある」と記者団に語ったのだ。来年9月の自民党総裁選に向けて、チャレンジャー魂が芽生えてきたのだろうか。

 前川氏は今年1月に天下り問題で引責辞任するまで文科省の事務方トップだった人物。その前川氏が記者会見で、「総理のご意向」文書が「確実に存在した」と明言し、「行政がゆがめられた」と指摘している事実は重い。政権側が、文書を怪文書扱いし、確認できないと主張していることに説得力は全くない。前川氏が国会での証人喚問に応じると言っているのに、与党が拒否するのは筋が通らず許されない。

 石破氏は記者団に「事務方のトップにいた方が、ああいう発言をされるということはそれなりの意義、意味がある」と述べたが、当たり前のことを言っているだけだ。

 一方、改憲を巡る石破氏の発言は、安倍氏との違いを打ち出そうとしている姿勢がはっきりみえる。石破氏は党内での改憲論議の進め方について、「総裁が勝手に決めるのはあまりフェアな議論ではない」と主張。安倍氏が提案した憲法9条1項、2項を残しつつ、自衛隊の存在を明記する改正についても「矛盾がそのまま続く」とし、「自民党の今までの議論の積み重ねになかった」と繰り返し指摘している。

 「ポスト安倍」の真っ先に名前が挙げられることが多い石破氏だが、その前途は決して明るいとは言えない。来年9月に予定される自民党総裁選では安倍氏の3選が有力。仮に2020年の東京五輪・パラリンピックまで安倍氏がつとめた後までの党内の政治力学なんて全く見通せない。安倍氏は石破氏に対して警戒を強めているとも言われる。麻生太郎副総理兼財務相、森喜朗元首相と石破氏の関係もあまり良くないようだ。

 石破氏の強みは政策通であることと、地方における人気の高さだ。2012年9月の自民党総裁選で地方票に関しては圧倒的な強さをみせ、安倍氏を上回りトップだった。しかし、その地方での人気も「安倍1強」のもと、どれだけ維持できているのかはわからない。

 石破氏にチャンスがあるとすれば、安倍氏が来年の総裁選で3選を果たし、任期満了まで務めた後ではなく、その前に安倍政権が倒れる事態になった場合ではないか。今は盤石の体制で、目ぼしいライバルは見当たらない安倍氏だが、政局は何かあると攻守の立場がオセロゲームのように入れ替わるものだ。加計学園の獣医学部新設計画や改憲問題は展開次第で波乱の要素を含んでいる。それ以外の思わぬ問題が今後起きることも十分ありえる。石破氏はそのときのために、安倍氏との違いを打ち出し、迫力のある存在でなければならない。

 
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新作星取表2017-17

【日本映画】
「はらはらなのか。」★
「ピーチガール」★★

【外国映画】
「スプリット」(米)★★
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(米)★★★★
「潜入者」(英)★★★


【採点基準】
★★★★★  90点~100点
★★★★    80点~89点
★★★     60点~79点
★★       40点~59点
★         0点~39点


 第89回アカデミー賞で、ケイシー・アフレックが主演男優賞に輝き、監督も務めたケネス・ロナーガンが脚本賞を受賞した「マンチェスター・バイ・ザ・シー」。米ボストン郊外で便利屋として働く主人公のリーが兄の急死を受け、故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーに戻るが、数年前、リーはこの町で、自らの不注意によりトラウマとなる家族の悲劇を引き起こしていた。

 残された16歳の甥との町での生活を通して、苦しみながらも、過去の悲劇と向き合っていくリー役を演じたアフレックの演技はさすがに見事で、人間ドラマがしっかりと描かれている。ただ、現在と過去の映像が特に区別されることなく、交錯して進んでいくので、集中して観ないと、ちょっと戸惑うかもしれない。

物議を醸すWBAミドル級戦の判定 ジャッジの処分も検討が必要か

 プロボクシングの世界戦の判定が物議を醸すことは国内外でよくあるが、今回は度が過ぎていたようだ。20日に東京で行われた世界ボクシング協会(WBA)ミドル級王座決定戦で、ロンドン五輪金メダリストで同級2位の村田諒太(帝拳)が1-2の判定で同級1位のアッサン・エンダム(フランス)に敗れたことに対して、すぐにWBA会長が判定結果を謝罪し、再選を要求する声明を発表。これは極めて異例なことだった。

 WBAのヒルベルト・ヘスス・メンドサ会長は自身のツイッターで、自らがつけた採点表を公表し、117-110で村田勝利との見解を示した。そのうえで、「公正な採点ができないスポーツに怒りと不満を覚える。村田諒太と帝拳プロモーション、日本のボクシングファンにおわびしたい。ひどい判定がもたらすダメージをどう回復させたらいいか言葉が見つからない」と述べ、再選を要求することを明らかにした。

 村田は試合後、判定に不満めいたことは一切もらさず、「多くの人たちに支えられてきたし、自分だけで決められるものでもない。そう簡単に『もう1度やりたい』とは言えない」と語っていたが、22日になってメディアの取材に応じ、「ロンドン五輪の後は、金メダルを取ったし、もういいかという感じがあったが、今回はもういいやという感じではない」と述べ、再起する意向を示唆した。

 村田サイドには世界ボクシング評議会(WBC)、世界ボクシング機構(WBO)からも王座挑戦の話が舞い込んでいるという。村田が再起する場合、WBAでエンダムとの再選を選ぶか、他団体の王者に挑戦するか、村田本人の意向や条件面を総合的に検討して判断することになりそうだ。

 村田とエンダムの一戦はジャッジのラウル・カイズ・シニア(米国)が117-110で村田を支持、グスタボ・パディージャ(パナマ)は116-111、ヒューバート・アール(カナダ)は115-112で、いずれもエンダムを支持した。

 12ラウンドを通じて試合は村田が支配することが多く、ダウンを1度奪うなど有効打では明らかに村田が勝った。エンダムが上回っていたのは手数だが、有効打はほとんど見られず、それでも手数を最優先の採点基準にすべきなのかには疑問が残った。一般にプロボクシングの世界で「疑惑の判定」といわれるときは、陣営とジャッジが裏で取引をしたのではないかと疑われるケースが多い。今回は日本での試合でもあり、そういうことはないように思われる。しかし、WBA会長がすぐさま、判定結果を批判し、謝罪するほどの異例の事態の場合は、不可解な採点をしたジャッジにしばらく世界戦をやらせないなどの処分があっていいのではないか。

 ただ、パナマのパディージャは2006年8月に横浜で行われた亀田興毅とファン・ランダエダ(ベネズエラ)のWBAライトフライ級王座決定戦でジャッジを担当。この試合は亀田が1ラウンドにダウンを喫するなど分の悪い試合だったにもかかわらず、亀田が2-1の判定で勝利し、王座に就いた。試合直後から中継したテレビ局に亀田の勝利はおかしいと抗議の電話が殺到し、判定はかなり物議を醸した。しかし、パディージャはこの試合ではただ1人、ジャッジとしてランダエダを支持。まっとうな採点をしていたのだった。

ロンドン五輪金メダリストの村田世界奪取ならず プロボクシングWBAミドル級戦

 プロボクシングの世界ボクシング協会(WBA)ミドル級王座決定戦が20日夜、東京・有明コロシアムで行われ、ロンドン五輪金メダリストで同級2位の村田諒太(帝拳)は、同級1位のアッサン・エンダム(フランス)に1-2の判定で敗れた。有効打で勝る村田が優勢とみられたが、厳しい判定結果となった。日本プロボクシング史上初の五輪金メダリストの世界王座奪取はならなかった。
 
 村田はガードを固め、前に出てプレッシャーをかける戦法。自分のスタイルを貫き、12ラウンドを通じて試合自体はコントロールしていた。4ラウンドにはカウンターとなる右ストレートでダウンも奪った。しかし、序盤から手数が少なすぎ、ラウンドごとにどちらかに優劣をつける採点法では、手数で勝るエンダムに微妙なラウンドの大半を奪われる形となった。
 
 エンダムに明らかな有効打はほとんど見られず、試合終了直後の両者の表情がすべてを物語っていた。村田は手数が少ないために印象が悪く、エンダムはその点だけで助けられた感じだ。村田はダメージのあったエンダムを深追いせず、結果的にはこれもあだとなった。エンダムが勝ったとはとてもいえない試合内容だったが、微妙なラウンドもどちらかに優劣をつける採点法のため、接戦との見方は成り立つ。村田のボクシングスタイルがプロの世界では、判定で不利になりうることを示す試合となってしまった。

 昔からプロボクシングの世界戦の判定で不可解な結果になることはいくらでもあり、「疑惑の判定」とまではいえないだろう。これまでのケースから、村田陣営が判定を不服としてWBAに提訴すれば、再選は認められるはずだ。
 
 ジャッジ3人の採点は村田側からみて、111-116、112-115、117-110。私の採点では117-110で村田の勝ちだった。

「ロシアゲート」が拡大 トランプ米大統領の政権運営に暗雲

 トランプ米政権とロシアとの関係を巡る疑惑(「ロシアゲート」)が拡大し、トランプ政権の運営に暗雲が立ち込めている。政府内部からの情報リークが止まらない形だ。野党・民主党の一部からは弾劾を求める声もある。トランプ氏が大統領に就任してまもなく4カ月。トランプ政権は早くも正念場を迎えている。

 新たに判明した疑惑は2件。1つはトランプ氏が今年2月、当時のコミー米連邦捜査局(FBI)長官に、ロシアとの不透明な関係を疑われて辞任したフリン前大統領補佐官(国家安全保障担当)の捜査終結を要請したという件だ。要請はフリン氏の補佐官辞任後だったそうだが、不当な捜査介入との批判を受けている。

 もう1つは、今月10日、ホワイトハウスで、ロシアのラブロフ外相、キスリャク駐米大使と会談した際、過激派組織「イスラム国」(IS)に関する機密情報を漏らした疑いだ。この機密情報は同盟国のイスラエルから提供されたものだったという。同盟国から受け取った情報を第三国に提供する場合、その同盟国から事前に了解を得なければならない暗黙のルールがあるが、トランプ政権はこれをしていなかった。米国、ロシアとも、ISを掃討する立場にある。

 いずれも米メディアの報道で判明した。これに対して、政府内部にいまだにトランプ大統領の誕生を認めたくない民主党を支持する人たちが少なからずおり、メディアにリークしているの見方がある。トランプ氏は先にFBI長官のコミー氏を電撃解任したばかりで、こうした見方に説得力を持たせている。今後、メディアの追及はいっそう厳しくなることが予想される。

 トランプ氏は、昨年の米大統領選で数々の決定的に不利な状況をもろともせずに世紀の番狂わせを演じて当選した人物だ。従来の政治の常識では推し量れない。さすがに全米支持率は低いが、強固な岩盤支持層を持っており、ここは全く崩れていない。まずはコミー氏の後任となるFBI長官にしかるべき人物を早急に任命し、 19日からのサウジアラビア、イスラエル、バチカンなどを訪れる初外遊で成果を出したい。

 特に新FBI長官の任命は重要だ。ここでもたつくようだと厳しい。ロシアゲートが致命傷になる前に、トランプ政権は食い止められるのか。予断を許さない状況になっている。
プロフィール

佐藤安律

Author:佐藤安律
(さとう・やすのり)
ジャーナリスト。1965年生まれ。大阪市立大学法学部卒。産経新聞記者として20年7カ月勤務し、政治部、夕刊フジ、大阪経済部などに所属。政治部では、厚相時代の小泉純一郎元首相、元自民党幹事長の野中広務氏らを担当した。産経新聞の年間連載「こども大変時代」で、取材班としてファイザー医学記事賞優秀賞を受賞。2011年8月からフリーランス。大阪市在住。得意分野は政治全般、日本映画、医療問題。原稿の依頼などコンタクトはyasunori7373@yahoo.co.jp

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