新作星取表2017-11

【日本映画】
「くも漫。」★★★
「3月のライオン 前編」★★★★
「ひるなかの流星」★★★
「PとJK」★★
「話す犬を、放す」★★★

【外国映画】
「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」(米)★★★
「汚れたミルク あるセールスマンの告発」(インド=仏=英)★★★
「わたしは、ダニエル・ブレイク」(英=仏=ベルギー)★★★


【採点基準】
★★★★★  90点~100点
★★★★    80点~89点
★★★     60点~79点
★★       40点~59点
★         0点~39点


 「話す犬を、放す」は、俳優スクールで指導するのをメインの仕事にしている娘と、レビー小体型認知症と診断された母の関係を明るく前向きに描いた作品だ。監督・脚本は熊谷まどかで、彼女の商業映画デビュー作。

 娘のレイコは細々と女優業も続けており、そこへ、プロの俳優として成功している学生時代の劇団仲間から映画出演の話が持ち込まれる。レイコは張り切り、撮影も始まるが、母・ユキエの症状が進行し、映画出演の仕事を続けることが困難になる。レイコ役につみきみほ、母・ユキエ役に田島令子。地味なキャストだが、この2人の女優が好演しており、悲壮感のない、爽やかな印象を残す作品に仕上がった。犬は母の幻視により、たびたび登場するのだが、理由は最後にわかる。そこの狙いは悪くないものの、ちょっとインパクトに欠けていて惜しい。

 「くも漫。」は原作者の経験に基づく実録漫画の映画化である。主人公の男は大学を卒業後に中学教師になったが、すぐに登校拒否に陥り退職。以来、ニートの生活を送っていたが、父の勧めもあり、中学校で臨時講師の職を得た。仕事は順調な滑り出しを見せ、自らへのほうびとして大みそかに風俗店に行くが、そこでくも膜下出血を発症する。

 靴をはかないで病院に運び込まれたため、入院中に家族や知人らからいったいどこで倒れたのかと追及を受けることになる。主治医は倒れた場所を伏せていたのだ。前半は斬新なユーモアセンスがさえわたっていたが、退院後からラストにかけてがいまひとつ。オリジナル性の高い、群を抜いてユニークな作品であることは間違いない。小林稔昌監督。

 「わたしは、ダニエル・ブレイク」は、名匠のケン・ローチ監督が引退宣言を撤回して挑んだ1本で、第69回カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)に輝いた。イングランド北東部のニューカッスルが舞台で、心臓の病により仕事を止められた59歳のベテラン大工の男と、2人の子供がいるシングルマザーの交流を描く。社会保障制度のあり方や公務員の仕事ぶりに対しても厳しい視点で問題提起している。内容を絶賛する人もいるが、ストーリーに意外性がなく、特にラストは物足りない。
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森友問題 野党の存在意義問われる局面

 学校法人「森友学園」(大阪市)の籠池泰典(本名・康博)理事長に対する証人喚問が23日、衆参両院の予算委員会で行われた。籠池氏は2015年9月、安倍晋三首相の昭恵夫人から封筒に入った100万円の寄付を受け取ったことなどを、具体的に克明に証言した。昭恵夫人は同日、自らのフェイスブックで、籠池氏の証言内容を否定するコメントを発表した。

 「籠池劇場」についてはテレビ、新聞で大々的に報じられており、私自身が取材して独自の情報を持っているわけではないので、詳細な論評はやめておく。官邸・与党側は、「籠池砲」に裏付け、物証がない点を強調。信ぴょう性に疑問を呈しており、早期の事態収拾を図りたい考えだ。しかし、とてもそういう状況ではない。対応を誤ると、政権の存立を揺るがしておかしくない雰囲気も出てきているように思う。

 とにかく、証人喚問により、疑惑は一層噴出しているのだが、「安倍1強」のもと、与党内からの追及には期待できない。ここは、野党の存在意義が問われる局面である。もともと、野党は国会での活躍こそが全てといってもいいくらいなのだ。昨日の証人喚問はテレビで全部見たが、こういうときは、やはり、調査力を持つ野党が一定勢力いることの大切さを改めて強く感じた。

続・政治家と番記者

 報道機関の永田町取材の特徴は番記者にあると前に書いた。その続編という形でもう少しだけ触れておきたいと思う。

 番記者は担当する有力政治家に密着して取材するのが基本スタイルだが、原稿も書かないといけないし、平時には完全に密着できているわけではない。しかし、政局になると、番記者は朝、政治家が家を出るところから夜帰宅するまで終日追いかけ、土日や祝日も関係なく、密着を試みる。もちろん、政治家に隠密行動をとられたら、そこの部分はわからない。

 そういう日々を送る番記者が、担当する政治家と親しくなる機会が多いのは当然だろう。表面的な報道だけでは見えない、その政治家のいい面に接することも少なからずある。

 よく批判を受けるのは、番記者と有力政治家の距離が近くなりすぎ、評論を書かせたら、提灯記事になっているということだ。そこは記者の姿勢、バランス感覚による。

 番記者の立場から最も困るのは、担当する有力政治家と相性が合わないケースだ。仕事だから、自分を殺して接しようと努力しても限界がある。政治記者の場合は取材相手、つまり政治家との人間関係が極めて重要になるので、相性が悪いとお手上げに近く、いい仕事はまずできない。

 それでは番記者としてやりがいを感じるときはというと、その逆だ。担当する有力政治家と相性がいい、あるいは好きなタイプの政治家で、魅力を感じる場合だ。番記者だけでなく、一般の人でも政治に興味を持つようになる近道は、好きな政治家、魅力を感じる政治家を見つけることだと思う。

 私が産経新聞政治部に所属していたのは橋本龍太郎政権の途中から小泉純一郎政権の初期までなのだが、番記者として一番やりがいを感じた政治家は誰だったかというと、野中広務氏である。

 野中氏は橋本政権での自民党幹事長代理、小渕恵三政権の官房長官、森喜朗政権における自民党幹事長と、権力の中枢にいて剛腕ぶりを発揮したわけだが、私が担当したのはそのころではない。森政権のあとの小泉政権で、「抵抗勢力のドン」のような存在に位置付けられていたときである。

 ここでは、野中氏の政治家としての実績には立ち入らない。野中氏は衆院議員在職中、永田町の事務所は議員会館だけで、高輪の議員宿舎住まい。政治資金集めのパーティーは一度も開かなかった。衆院の所属委員会にはできるかぎり出席していた。野中氏は情報収集力が武器の政治家で、策士の印象もあったと思うが、生活ぶりや行動は質素できちんとしていた。このため、野中氏とは政治行動で距離のある政治家からも常に一目置かれていた。

 番記者の日ごろの仕事ぶりもよく見ていた。たたきあげの苦労人らしい人情味があった。政治家によっては特定の女性記者にデレデレするようなタイプもいて、見苦しいのだが、野中氏はそういうところが微塵もない人で、番記者への接し方も公平で気持ちがよかった。野中氏は番記者の間ではとても人気があった。

新作星取表2017-10

【日本映画】
「チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~」★★★

【外国映画】
「お嬢さん」(韓国)★★★
「ブラインド・マッサージ」(中国=仏)★★★★


【採点基準】
★★★★★  90点~100点
★★★★    80点~89点
★★★     60点~79点
★★       40点~59点
★         0点~39点


 このほど全米チアダンス選手権で5連覇を達成した県立福井商業高校チアリーダー部「JETS」。熱血指導女性教師のもと、JETSが創部3年で、2009年に全米選手権を初制覇した時の実話をモデルにしたのが「チア☆ダン」である。河合勇人監督。

 映画では、県立福井中央高校チアダンス部となっている。好きなサッカー部の同級生の男子生徒を応援をしたいと、チアダンス部に入り、全米選手権初制覇の中心メンバーに成長していく主役のひかりを演じるのが広瀬すずだ。荒れていたバトン同好会をチアダンス部に変え、部員たちに高い目標を与えて厳しく指導する女性教師・早乙女役に天海祐希。

 広瀬すず主演映画というのが売りのため、部員たちの視点から主に描かれる。主役のひかりたちが入学してから3年生の時に全米選手権を初制覇するまでの話がどんどん進行するのだが、内容的には陳腐で薄っぺらい印象を免れない。何か、象徴的なエピソードを見つけ出し、そこを掘り下げたほうがクオリティーが上がったと思われる。登場人物のキャラクター設定にもセンスが感じられない。

 アイドル映画、テレビドラマの延長線上といった内容で、やや期待外れだった。しかし、華があり、観る者に元気を与え、圧倒的な存在感を発揮する広瀬すずが、同世代の女優のなかで、いかに優れているかということは十分確認できる。

「風の中の子供」

 ロケーション撮影を好み、子供の世界を描かせると右に出る者はいなかった清水宏(1903-1966)。彼の代表作のひとつとされる1937年の松竹大船作品である。原作は児童文学作家・坪田譲治の新聞連載小説。キネマ旬報ベスト・テン第4位。京都文化博物館で開催中の特集上映「【日本映画120年記念企画】古典・名作映画ノススメ②」で鑑賞した。

 主人公は小学校5年生・善太(葉山正雄)と1年生・三平(爆弾小僧)の仲の良い兄弟。善太は学業優秀だが、三平はとにかく腕白で、成績も振るわない。映画は三平のほうが中心になる。夏休みに入ったある日、三平はけんか相手の金太郎から、会社の経営者である三平の父(河村黎吉)が近くクビになり、警察に連れて行かれると聞かされる。

 三平の父は私文書偽造の容疑をかけられたのだが、株主である金太郎の父らの陰謀だった。三平の一家は、父不在となって、生活が苦しくなり、三平は田舎の叔父(坂本武)の家に預けられた。三平は実家を恋しがるが、ここでも腕白ぶりを発揮。叔母はこれ以上責任を持てないと、三平を実家へ戻しに行った。

 やがて、善太が読んでいた父の日記から、無実を証明する書類が見つかり、父は釈放されて家に帰ってきた。善太と三平は大はしゃぎするのだった。

 叔父の家に預けられた三平が、近くの川で樽を舟の代わりにして遊んでいたところ、そのまま流され、大慌てで叔父が助けに行くシーンは強い印象を残す。三平が無事救出されると、一部始終を見ていた子供たちが一斉に万歳三唱。このあたりのユーモアセンスは抜群だ。子供たちの集団の様子、純真な小学生の兄弟の日常をこれだけ生き生きとナチュラルに描く清水宏の手腕は天才的でさえある。
 
 ちなみに、私が一番好きな清水宏監督作品は、奈良の大仏様のところに住みついた戦災孤児を描いた「大仏さまと子供たち」(1952年)だ。子供の世界を描く名手・清水宏の作品は世界的にも類例のないユニークさを持っている。近年、非常に評価が高まった映画作家である。

プロフィール

佐藤安律

Author:佐藤安律
(さとう・やすのり)
1965年生まれ。大阪市立大学法学部卒。産経新聞記者として20年7カ月勤務し、政治部、夕刊フジ、大阪経済部などに所属。政治部では、厚相時代の小泉純一郎元首相、元自民党幹事長の野中広務氏らを担当した。産経新聞の年間連載「こども大変時代」で、取材班としてファイザー医学記事賞優秀賞を受賞。2011年8月からフリーランス。大阪市在住。得意分野は日本映画、政治、医療問題。原稿の依頼などコンタクトはyasunori7373@yahoo.co.jp

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