佐藤安律の「ニュースサイト1045」
元産経新聞記者で「炎のジャーナリスト」が、政治全般と映画(主に日本映画)を中心にマイオピニオンを発信します。あるべきブログの姿をめざして順次内容を刷新しています。2017年6月27日付で「佐藤安律の『映画と政治のブログ』」から名称を変更しました。
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「Wの悲劇」
 薬師丸ひろ子と三田佳子の競演、夏樹静子の原作を劇中劇にして映画自体のオリジナルストーリーと連動させた構成が感動的な傑作である。1984年の角川春樹事務所作品。監督は澤井信一郎。脚本は荒井晴彦と澤井の共同。キネマ旬報ベスト・テン第2位。毎日映画コンクール日本映画大賞。大阪・九条のシネ・ヌーヴォで開催中の特集上映「角川映画祭」で鑑賞した。

 薬師丸が扮するのは、劇団の研究生・三田静香。劇団が「Wの悲劇」公演にあたり、準主役をオーディションで決めることになった。静香はチャレンジするが、準主役には落選。端役兼プロンプター担当に回された。準主役の座を射止めたのは、静香と同期の研究生である菊地かおり(高木美保)だった。

 ところが思わぬ事態になる。大阪公演のためホテル滞在中のある夜、静香は劇団の看板女優で「Wの悲劇」の主役をつとめる羽鳥翔に呼び止められ、翔の部屋へ強引に入れられた。翔を演じるのが三田佳子である。部屋のベッドでは、初老の1人の男が裸で死んでいた。翔の長年の支援者で愛人だった。翔と寝ている時に腹上死したのだ。

 このままでは、翔にとって致命的なスキャンダルになる。翔は静香に、準主役をやらせるので、身代わりになってほしいと依頼。動転した静香は最終的にこれを引き受けてしまう。大阪に次ぐ東京公演から、かおりは準主役の座を降ろされ、静香が新たに登場することになった。

 当時人気絶頂だった薬師丸を大人の女優に脱皮させようと企画された映画であり、もちろん主演は薬師丸。彼女は見事にその期待に応えた。助演の三田の存在感がすごかった。大人の女優とはどんなものかという見本を示し、これまでのキャリアを集大成したかのような演技は批評家から絶賛された。三田はキネマ旬報、毎日映画コンクール、ブルーリボンの主要各賞で助演女優賞に輝く。

 この映画の大きな魅力の一つに、劇中劇とその舞台裏の迫力がある。映画に劇団の演出家役で出演する蜷川幸雄が実際に指導している。

 本当に見どころの多いクオリティーの高い映画だと思う。静香がスキャンダルの身代わりを実行に移す場面から舞台公演へ切り替わっていく一連の流れ、準主役交代に伴う緊急記者会見でみせた静香の迫真の演技。最も胸が熱くなったのは、「Wの悲劇」東京公演初日のカーテンコールのシーンだ。ここに薬師丸と三田の競演は最高潮に達した感があった。

 ラストも実によかった。静香には、オーディション前に出会った森口昭夫(世良公則)という恋人がいた。昭夫はかつて小さな劇団で役者をしていたが、その道を断念し、不動産屋をしている。静香はスキャンダルの身代わりをして準主役の座を奪ったことが公になり、ボロボロの状態で劇団を去った。昭夫は静香に、自分の胸に飛び込んでくるようにと声をかけた。しかし、静香は、そうしたいが、安易な道を行くと、ますます自分自身がだめになってしまうと断った。静香はあくまで女優にこだわり、そのためにはしっかりと人生を歩んでいくことが重要で、まずは1人でやり直してみたいという考えだった。静香の前向きな姿勢に拍手を送る昭夫。ラストは、昭夫に向けてお別れのポーズをとった静香の表情をストップモーションで処理。薬師丸の主題歌が流れて、エンドクレジットが始まる。

 わが生涯の日本映画ベストテンに入れてもいいような素晴らしい出来だった。

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佐藤安律

Author:佐藤安律
(さとう・やすのり)
ジャーナリスト。1965年生まれ。大阪市立大学法学部卒。産経新聞記者として20年7カ月勤務し、政治部、夕刊フジ、大阪経済部などに所属。政治部では、厚相時代の小泉純一郎元首相、元自民党幹事長の野中広務氏らを担当した。産経新聞の年間連載「こども大変時代」で、取材班としてファイザー医学記事賞優秀賞を受賞。2011年8月からフリーランス。大阪市在住。得意分野は政治全般、日本映画、医療問題。原稿の依頼などコンタクトはyasunori7373@yahoo.co.jp

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