佐藤安律の「ニュースサイト1045」
元産経新聞記者で「炎のジャーナリスト」が、政治全般と映画(主に日本映画)を中心にマイオピニオンを発信します。あるべきブログの姿をめざして順次内容を刷新しています。2017年6月27日付で「佐藤安律の『映画と政治のブログ』」から名称を変更しました。
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「スリ」(黒木和雄監督版)
 アルコール依存症で手が震え、仕事にならない初老のスリの男と、彼を取り巻く人物たちの人間模様を描いた黒木和雄監督による2000年の作品である。製作はアートポート=衛星劇場。キネマ旬報ベスト・テン第7位。大阪・九条のシネ・ヌーヴォで開催中の特集上映「没後十年 黒木和雄映画祭」で鑑賞した。

 原田芳雄演じる海藤は廃ビルの屋上に住んでおり、その管理人をしているが、本業は電車内でのスリである。しかし、アルコール依存症の影響で腕はめっきり落ちている。海藤のスリでのパートナーが、レイという娘(真野きりな)だ。孤児で施設にいたレイを、海藤が引き取る形でずっと面倒をみてきたのだった。

 レイはある日、電車内で挑発的な服を着て乗客の男に体を触らせ、その間に財布を抜き取っているところを刑事に見つかる。レイはとっさに近くにいた金髪の青年のポケットに財布を入れ込んで、自分は何もしていないと主張するのだが、これがきっかけとなって、金髪の青年・一樹(柏原収史)と付き合うようになる。一樹はレイが反対するなか、自分もスリになりたいと、強引に海藤に弟子入りを志願し、認められる。

 海藤に思いを寄せる女性もいる。断酒会を主宰する鈴子(風吹ジュン)である。海藤は断酒会に一度参加するが、それっきり欠席を続けており、心配になった鈴子は廃ビルの屋上に海藤を訪ねていく。このほか、海藤の動向を常に監視するベテラン刑事だが、人間としての海藤が好きなようで、アルコール依存症からなんとか立ち直らせたいと思う矢尾板(石橋蓮司)がいる。

 矢尾板を除く主な登場人物はみんなダメ人間という設定になっており、ストーリー的にも面白い。ユーモラスでありながら切なく、渋く深みのある演技をみせた原田はキネマ旬報主演男優賞。俳優陣で健闘が光ったのは柏原と真野だ。2人の役は映画において極めて重要だった。原田扮する海藤が、孤児から育ててきたレイの幸せを願っているところは、バックボーンになっている。柏原と真野が原田との絡みで、嫌みなく、生き生きと力強く演じており、ドラマを盛り上げるのに大きく貢献していたと思う。この映画は初鑑賞だが、愛すべき雰囲気があり、とても気に入った。

 もう1人覚えておいてほしい人がいる。レイの兄で、彼女と一緒に海藤に面倒をみてもらっていたが、その善意を信じず、反抗的な態度とり、飛び出してヤクザになったアキラだ。このアキラを演じた人こそ、プロボクシングの元WBC世界スーパーフライ級王者で、6度のタイトル防衛に成功した川島郭志である。 私は小学校高学年からの大のボクシングファンなのだが、引退後の川島がこんなレベルの高い映画に俳優として出演しているとは知らなかった。

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佐藤安律

Author:佐藤安律
(さとう・やすのり)
ジャーナリスト。1965年生まれ。大阪市立大学法学部卒。産経新聞記者として20年7カ月勤務し、政治部、夕刊フジ、大阪経済部などに所属。政治部では、厚相時代の小泉純一郎元首相、元自民党幹事長の野中広務氏らを担当した。産経新聞の年間連載「こども大変時代」で、取材班としてファイザー医学記事賞優秀賞を受賞。2011年8月からフリーランス。大阪市在住。得意分野は政治全般、日本映画、医療問題。原稿の依頼などコンタクトはyasunori7373@yahoo.co.jp

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