佐藤安律の「ニュースサイト1045」
元産経新聞記者で「炎のジャーナリスト」が、政治全般と映画(主に日本映画)を中心にマイオピニオンを発信します。あるべきブログの姿をめざして順次内容を刷新しています。2017年6月27日付で「佐藤安律の『映画と政治のブログ』」から名称を変更しました。
09 | 2017/10 | 11
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

「巨人と玩具」
 増村保造監督の初期の代表作とされるが、それだけにとどまらず、当時の日本映画界に確かな一撃を加えた増村映画の最高峰と言っていい内容だと思う。1958年の大映東京作品。原作は開高健、脚本は白坂依志夫。大手製菓会社同士の激烈な宣伝合戦を通して、高度経済成長期における企業戦士の猛烈ぶりと、マスコミに翻弄される大衆社会を戯画化した。キネマ旬報ベスト・テン第10位。大阪・九条のシネ・ヌーヴォで開催中の特集上映「溝口健二&増村保造映画祭 変貌する女たち」で鑑賞した。

 まず、これほど優れたタイトルバックを見たことがない。1枚の若い女性をモデルにした広告写真がどんどん分裂して増殖、画面いっぱいを埋め尽くす。そこへ、「巨人と玩具」のタイトルが出て、スタッフ、出演者のクレジットが続く。影響力のあるマスコミに繰り返し取り上げられれば、中身は二の次、どんどん大衆に浸透していくことを意味している。タイトルバックだけで、映画のテーマの一つを鮮やかに表現してみせる。

 この若い女性は、野添ひとみが演じる島京子で、映画の中心舞台となるワールド製菓のイメージガールである。京子を見つけたのは、仕事の鬼と化している宣伝部の合田課長(高松英郎)だった。部長は合田の義父なのだが、長年のストレスで胃を病み、精彩を欠いている。合田は後に、義父を事実上追い出し、自らが部長に就任する。

 やり手の合田に目をかけられたのが、新入社員で宣伝部に配属された西である。この西こそが映画の主人公で、川口浩が演じる。西はイメージガールの京子の担当となり、ライバルのジャイアンツ、アポロ両社との熾烈な宣伝合戦の最前線に立つ。ジャイアンツにはラガーマンだった学生時代からの親友、アポロには恋人らしき女性がいるが、どちらも宣伝部で、友情や恋愛にうつつをぬかすなんていう甘いことが許されるはずがなかった。

 京子も合田に見出された時は、虫歯だらけで舌をペロッと出す癖のある垢抜けない娘だったが、週刊誌やテレビなどに取り上げられて有名になると、すっかりうぬぼれ、ワールドのイメージガールだけでは満足できず独自の活動を始める。

 人間性のかけらも感じられない職場に失望した西は、一時は尊敬した上司の合田に、もう会社を辞めると告げるが、合田から「辞めてどうするんだ。この日本では、どんな仕事でも狂ったように働くしかないんだ」と言われる。合田もひどく体調を崩し、吐血しているが、それでも自ら宣伝用の宇宙服に着替えて街へ出ようとする。西は合田を押し倒し、自分が宇宙服を着て、街をさまよっているところで映画は終わる。

 映画評論家の佐藤忠男が著書「日本映画の巨匠たちⅢ」(学陽書房)で、この映画について、端的でシャープなコメントをしており、全く同感なので、以下、紹介しておきたい。

 脚本の白坂依志夫と監督の増村保造は、当時のいわゆる良心的な映画には、社会の被害者に同情してみせるだけの敗北主義的な傾向が強いと言い、力いっぱい自我を主張して生き抜く人間をこそ描くべきだと主張した。彼らは躍動するようなエネルギーを一作ごとにエスカレートさせて多くの追随者を生んだ。「巨人と玩具」はそのエスカレートの一つの頂点であった。ただ、この映画は批評家たちの賞賛は受けたが興行的には振るわなかった。理由はおそらく、そこには人々の共感を勝ち得る人物が1人も描かれていなかったからであると思う。



コメント

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


トラックバック
トラックバック URL
http://toyokiyo73.blog.fc2.com/tb.php/613-d716ca9b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

佐藤安律

Author:佐藤安律
(さとう・やすのり)
ジャーナリスト。1965年生まれ。大阪市立大学法学部卒。産経新聞記者として20年7カ月勤務し、政治部、夕刊フジ、大阪経済部などに所属。政治部では、厚相時代の小泉純一郎元首相、元自民党幹事長の野中広務氏らを担当した。産経新聞の年間連載「こども大変時代」で、取材班としてファイザー医学記事賞優秀賞を受賞。2011年8月からフリーランス。大阪市在住。得意分野は政治全般、日本映画、医療問題。原稿の依頼などコンタクトはyasunori7373@yahoo.co.jp

最新記事

カテゴリ

月別アーカイブ

検索フォーム

最新トラックバック

フリーエリア

RSSリンクの表示

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

リンク

このブログをリンクに追加する

QRコード

QR