佐藤安律の「ニュースサイト1045」
元産経新聞記者で「炎のジャーナリスト」が、政治全般と映画(主に日本映画)を中心にマイオピニオンを発信します。あるべきブログの姿をめざして順次内容を刷新しています。2017年6月27日付で「佐藤安律の『映画と政治のブログ』」から名称を変更しました。
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「夜明けのうた」
 蔵原惟繕監督が、浅丘ルリ子を起用した役名からとった「典子三部作」の最後を飾る1965年の日活作品。岸洋子が歌い、前年の第6回日本レコード大賞歌唱賞に輝いた同名曲(作詞・岩谷時子、作曲・いずみたく)を題材とした歌謡映画である。大阪・九条のシネ・ヌーヴォで開催中の特集上映「生誕90年 映画監督 蔵原惟繕」で鑑賞した。

 浅丘ルリ子が演じるのはミュージカル女優として華々しく活躍する緑川典子。しかし、私生活では妻子ある作曲家の野上(岡田眞澄)とだらだら不倫関係を続け、付き人の運転手には自宅から宝石とお金を持ち逃げされ、表の顔との落差は大きい。

 そんななか、典子に次の舞台の台本が渡される。書いたのは典子のことをよく理解する脚本家の真木(小松方正)。タイトルは「夜明けのうた」となっており、典子の今の実情が書かれていた。真木は典子に新たな一歩を踏み出してほしいとの思いで、その台本を書いたのだが、典子は「自分のスキャンダルを暴くような舞台はとてもできない」とこれを拒否。会社のいいなりになって演じること自体にも嫌気がさしていた。

 典子の心境に大きな変化を与えることになるのが、典子とドライブインの喫茶店で偶然出会った自動車修理工の利夫(浜田光夫)と千加子(松原智恵子)の若いカップル。千加子は目の病気で近く失明することが避けられないのだが、利夫は懸命に千加子を愛し、支えていこうと決意している。

 典子は2人の純愛に胸を打たれ、野上との関係を清算する。そして、自宅に戻って台本を読み、真木にぜひ舞台で演じさせてほしいと電話で連絡する。映画は、自宅マンションの窓を開け、夜明けの光景を見る典子の生き生きとした表情を映し出して終わる。

 映画のオープニングは、舞台やテレビなどで活躍する典子の姿を写真で紹介し、仕事を終えて放送局から出てきた典子が購入したばかりの外車に乗り込む場面で動画に切り替わる。典子が外車を運転しているところでタイトルが出る。このオープニングがスタイリッシュで斬新だった。

 全編にわたってキュートな浅丘ルリ子がすごくいい。その一方、将来に悩む若いカップルと向き合っている時にはキリッとしていて、ルリ子が変化に富んだ最高に魅力的な表情を見せる。岸洋子も本人役で出演している。ルリ子扮する典子がナイトクラブで岸に花束を渡し、「夜明けのうた」をリクエストする場面がある。これは、ミュージカルの「夜明けのうた」を拒否する典子をなんとか出演させようとプロデューサーたちが仕組んだものだった。客の目もあり、指示通りにした後、典子が「駆け出しでもないのに、どうして私が花束なんか渡さないといけないの」とセリフを吐くところなんかも面白い。テンポがよく、カメラワーク、映像表現も洗練されていて、愛すべき内容の映画になっている。

 私がこれまで鑑賞した蔵原監督の作品群の中では、製作年順に「この若さある限り」(1961年)、「硝子のジョニー・野獣のように見えて」(1962年)、「執炎」(1964年)、これと「夜明けのうた」がマイベストワン候補。「執炎」もルリ子主演だが、「夜明けのうた」と「執炎」の2本を観ると、当時のルリ子の圧倒的な魅力にうならされる。


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佐藤安律

Author:佐藤安律
(さとう・やすのり)
ジャーナリスト。1965年生まれ。大阪市立大学法学部卒。産経新聞記者として20年7カ月勤務し、政治部、夕刊フジ、大阪経済部などに所属。政治部では、厚相時代の小泉純一郎元首相、元自民党幹事長の野中広務氏らを担当した。産経新聞の年間連載「こども大変時代」で、取材班としてファイザー医学記事賞優秀賞を受賞。2011年8月からフリーランス。大阪市在住。得意分野は政治全般、日本映画、医療問題。原稿の依頼などコンタクトはyasunori7373@yahoo.co.jp

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