佐藤安律の「ニュースサイト1045」
元産経新聞記者で「炎のジャーナリスト」が、政治全般と映画(主に日本映画)を中心にマイオピニオンを発信します。あるべきブログの姿をめざして順次内容を刷新しています。2017年6月27日付で「佐藤安律の『映画と政治のブログ』」から名称を変更しました。
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「剣」
 三島由紀夫が文芸雑誌「新潮」に発表した同名の短編小説を、三隅研次監督が市川雷蔵主演で映画化した現代劇である。1964年の大映京都作品。三隅・雷蔵コンビによる「剣三部作」の1つで、脚本は舟橋和郎が担当した。三島の「滅びの美学」、その自決の真相を考えるうえで、興味深い内容になっている。京都文化博物館で開催中の「【日本映画120年記念企画】古典・名作映画ノススメ⑥」で鑑賞した。

 舞台は東和大学剣道部。雷蔵扮する主人公の国分は、強さと正しさを追い求め、剣の道に邁進する青年だ。現代社会においても純粋さを失ってはならないという信念を持つ。この国分と同学年で同じ剣道四段の賀川(川津祐介)は、国分の生き方は欺瞞であり、国分にだけは絶対に勝ちたいと、強く意識している。

 国分と賀川の2人が剣道部の主将候補だったが、監督や先輩たちは、賀川の人間的な未熟さを指摘し、国分を主将に選ぶ。国分がやりやすいようにとの配慮から、賀川は副将をはじめ他の役職にも選ばれなかった。国分の人間性、ストイックな姿勢は部員たちから絶対的な尊敬を集めているが、もっと人間らしい生き方をすべきだとの声もある。そんななか、新入部員の壬生は、国分に心酔しきっていた。

 国分は、女性には目もくれない正義感の強い剣道一筋の人物だ。そんな国分のことが好きで、なとんか自分に振り向かせたいと接近してくる女子大生・恵理(藤由紀子)がいた。恵理は自らの魅力をひけらかそうと、国分と2人きりになった時、国分が恵理の肉体を求めてきたと、賀川に話した。国分のことをよく知る賀川にはそれがウソだとわかっていた。

 クライマックスは、全日本大学選手権での団体戦優勝を目指しての厳しい夏合宿だ。場所は浜辺近くで、国分は部員たちに水泳を禁止した。国分が合宿地に到着した監督を迎えに行くため宿を離れている間、賀川は部員たちに水泳を扇動する。賀川は、恵理が賀川にしたウソの話を事実であるかのように披露し、これで躊躇していた部員たちの心は動いた。国分を慕う壬生は水泳にただ1人加わらなかった。しかし、国分が監督と共に戻ってきた時、自分1人だけ、いい子になって残っている姿を見せるのは耐えられないと、水泳に参加したことにするのだった。

 国分は賀川ら部員たちを責めることは一切なかった。合宿の全日程が終了し、宿での打ち上げで国分に変わった様子は見られなかった。その夜、国分は壬生に「お前は本当に海へ行ったのか」と優しい口調で聞いた。壬生は「はい」と答えた。就寝時刻になり、壬生は国分がいないことに気付いた。驚いた部員たちが外を探したところ、剣道着のままで自ら命を絶った国分の姿を発見した。

 ラストは、監督が大学の剣道場に部員たちを集めて、国分がつけていた日誌を読み上げるシーンで、この映画のすべてを物語っている。日誌には「俺には統率者の資格がない。強く正しいものになるか、自殺するか、2つに1つである」と書かれていた。賀川は「あいつが死ぬなんて考えてもみなかった。あれだけの強い男がなぜ、生きることに負けたんだ」と涙を流した。監督は「国分は生きることに負けたんじゃない。正しさ、強さを永遠のものにしたんだ」と言うのだった。

 オープニングのタイトルバックも強く印象に残る。モノクロの映画だが、画面の背景の色を白と黒の2つに分け、向かって左側の画面に「KEN」と表示し、右側の画面で出演者やスタッフを紹介していく。実にスタイリッシュで、最初から「これは期待できそうだ」と引き付けた。雷蔵主演の現代劇でも屈指の面白さである。

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佐藤安律

Author:佐藤安律
(さとう・やすのり)
ジャーナリスト。1965年生まれ。大阪市立大学法学部卒。産経新聞記者として20年7カ月勤務し、政治部、夕刊フジ、大阪経済部などに所属。政治部では、厚相時代の小泉純一郎元首相、元自民党幹事長の野中広務氏らを担当した。産経新聞の年間連載「こども大変時代」で、取材班としてファイザー医学記事賞優秀賞を受賞。2011年8月からフリーランス。大阪市在住。得意分野は政治全般、日本映画、医療問題。原稿の依頼などコンタクトはyasunori7373@yahoo.co.jp

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