佐藤安律の「ニュースサイト1045」
元産経新聞記者で「炎のジャーナリスト」が、政治全般と映画(主に日本映画)を中心にマイオピニオンを発信します。あるべきブログの姿をめざして順次内容を刷新しています。2017年6月27日付で「佐藤安律の『映画と政治のブログ』」から名称を変更しました。
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「神様のくれた赤ん坊」
 ある日突然、小さな子供を押し付けられた男と同棲中の女が、子供の本当の父親を探して、広島・尾道と九州各地を訪ね歩くロードムービー、「旅行もの」の傑作である。1979年の松竹作品。監督は前田陽一。松竹伝統の喜劇に新たな視点でスパイスを加えたような見事な1本だ。主演は桃井かおりと渡瀬恒彦。キネマ旬報ベスト・テン第4位。大阪・九条のシネ・ヌーヴォで開催中の特集上映「荒井晴彦映画祭 70になった全身脚本家」で鑑賞した。

 井伏鱒二原作、中村登監督の「集金旅行」(1957年)のリメイクとして企画されたが、そのままリメイクしたのでは時代に合わず、前田、荒井、南部英夫の3人が脚本を分担し、実質的にオリジナルの内容に仕立て上げた。ちなみに「集金旅行」は佐田啓二と岡田茉莉子の主演で、松竹はこの作品をきっかけに「旅行もの」を積極的に作り出し、「男はつらいよ」シリーズにつながっていく。

 渡瀬扮する三浦晋作は芸能事務所でエキストラのアルバイトをしながらプロの漫画家を目指している。駆け出し女優の森崎小夜子(桃井)と同棲している自宅に、見知らぬ女(樹木希林)が突然、新一という名前の男の子を連れて訪ねてきた。新一の母親が男をつくって駆け落ちし、置き手紙には新一の父親は誰かわからないが、候補は晋作を含めて5人いると書かれていたのだ。女は母親宅の隣人で、あとは父親の可能性がある晋作が対処すべきだと、新一を置いて帰っていった。

 小夜子は「晋作と新一。あんたが名付けたんじゃないの」と呆れるが、晋作が新一を連れての父親探しの旅に同行する。小夜子は最愛の母を失って天涯孤独の身で、母と暮らした故郷の記憶がおぼろげながらに残っており、旅は母との過去、自分のルーツを辿る目的を兼ねていた。旅の途中で、小夜子は母が娼婦だったことを知る。品のいいけだるさを漂わせ、愛嬌、ユーモアたっぷりに小夜子を演じた桃井が素晴らしく、感動的でさえあった。セリフ、しぐさなど桃井以外では出せない味だ。桃井は同年、「もう頬づえはつかない」と「神様のくれた赤ん坊」の演技で多くの共感を集め、主要な主演女優賞を独占。芸術選奨新人賞にも輝いた。

 渡瀬も好演だったし、晋作はもちろん、それ以外の父親候補たちとその周辺のキャラクターの面白さ、全体を貫くユーモアセンス、物語のバランスなど、感心させられる内容だった。山田洋次がこの映画を観て気に入り、「男はつらいよ 寅次郎春の夢」との併映になったそうである。





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佐藤安律

Author:佐藤安律
(さとう・やすのり)
ジャーナリスト。1965年生まれ。大阪市立大学法学部卒。産経新聞記者として20年7カ月勤務し、政治部、夕刊フジ、大阪経済部などに所属。政治部では、厚相時代の小泉純一郎元首相、元自民党幹事長の野中広務氏らを担当した。産経新聞の年間連載「こども大変時代」で、取材班としてファイザー医学記事賞優秀賞を受賞。2011年8月からフリーランス。大阪市在住。得意分野は政治全般、日本映画、医療問題。原稿の依頼などコンタクトはyasunori7373@yahoo.co.jp

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