佐藤安律の「ニュースサイト1045」
元産経新聞記者で「炎のジャーナリスト」が、政治全般と映画(主に日本映画)を中心にマイオピニオンを発信します。あるべきブログの姿をめざして順次内容を刷新しています。2017年6月27日付で「佐藤安律の『映画と政治のブログ』」から名称を変更しました。
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「典子は、今」
 サリドマイド薬害の影響で、両腕がない状態で生まれた辻典子さんが成長し、進路を決める高校3年生の時から、難関を突破して熊本市の職員に採用され自立の大きな一歩を踏み出すまでを中心に描いたセミドキュメンタリー映画である。1981年のキネマ東京作品。監督・脚本は松山善三。辻典子さんは本人役(映画での役名は松原典子)で主演し、高峰秀子が演技指導を行った。大阪・九条のシネ・ヌーヴォで開催中の特集上映「松山善三・高峰秀子~夫婦で歩んだ映画人生」で鑑賞した。

 映画は高校3年生の典子が、足を使って毛筆と墨で半紙に、「希望」と書こうとしているところから始まる。熊本大学病院で生を受けた時の様子や、障がいの重さから小学校入学を次々と断られたことなどの過去が紹介されていく。

 幼いころから足を器用に使うことができた典子は、訓練により、足の指で鉛筆を持って字を書いたり、歯を磨いたり、身の回りのほとんどのことが自分でできるようになる。母・春江(渡辺美佐子)は、典子の将来を考え、できることは自分でするように厳しく育てていく。

 明るい性格で、高校では友達も多い典子。グラフィックデザイナーになるのが夢で、大学進学を志望した。しかし、ある日、自宅で母が転倒し、母の老いを強く感じたは典子は就職することを決断。担任の教師(河原崎長一郎)の勧めもあり、地元の熊本市職員の採用試験を受けることにした。典子は競争倍率26倍の難関を突破して合格し、障がい者福祉の担当として働き始める。

 クライマックスは、典子が、小児麻痺で車いすの生活を送る女子高生を訪ねて広島に一人旅をするところになる。母の春江は一人旅に反対する。家では、足を使って、身の回りのことはきちんとこなせる典子だが、外では足を使えないため、切符を買うことも駅員に渡すことも、途中で弁当を食べることもできないじゃないかと、春江は言うのだ。しかし、典子は一人旅を決行する。

 小林桂樹と高峰秀子が聴覚障がい者の夫婦役となった「名もなく貧しく美しく」(1961年)、先にブログで紹介した「われ一粒の麦なれど」(1964年)など、障がい者と社会のあり方をテーマにした作品を追ってきた松山善三。「典子は、今」は、その集大成のような作品だ。映画は公開当時、大変な反響を呼んだ。衝撃的な内容で、映画としての賛否はあるだろうが、辻典子さんがまっすぐに力強く、新しいことに挑戦して生きていこうとする姿、タブー視することなく、ありのままの日常をできるだけ伝えようとする映像は、確かに胸を打つものがあった。




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佐藤安律

Author:佐藤安律
(さとう・やすのり)
ジャーナリスト。1965年生まれ。大阪市立大学法学部卒。産経新聞記者として20年7カ月勤務し、政治部、夕刊フジ、大阪経済部などに所属。政治部では、厚相時代の小泉純一郎元首相、元自民党幹事長の野中広務氏らを担当した。産経新聞の年間連載「こども大変時代」で、取材班としてファイザー医学記事賞優秀賞を受賞。2011年8月からフリーランス。大阪市在住。得意分野は政治全般、日本映画、医療問題。原稿の依頼などコンタクトはyasunori7373@yahoo.co.jp

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