佐藤安律の「ニュースサイト1045」
元産経新聞記者で「炎のジャーナリスト」が、政治全般と映画(主に日本映画)を中心にマイオピニオンを発信します。あるべきブログの姿をめざして順次内容を刷新しています。2017年6月27日付で「佐藤安律の『映画と政治のブログ』」から名称を変更しました。
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「女中ッ子」
 秋田の寒村から上京してきた素朴なお手伝いさんと、反抗的な態度で周囲を悩ます小学生の次男坊の信頼関係と別れを描いた田坂具隆監督の心温まる秀作である。1955年の日活作品。原作は芥川賞作家・由起しげ子の同名小説。キネマ旬報ベスト・テン第7位。京都文化博物館で開催中の「近代文学と映画2 女流作家篇」で鑑賞した。

 田坂は戦前から名匠として知られたが、兵役中に広島で被爆。戦後は体調が芳しくなく、休養と復帰を繰り返した。映画会社を転々とし、最後は東映で優れた作品を残したが、古巣は日活。その日活が戦後、映画製作を再開し、田坂は3年の闘病生活を経て古巣でメガホンを取ることになった。それが左幸子主演の「女中ッ子」である。

 左扮する織本初がお手伝いさんとしてやってきたのは、大手時計会社総務部長の加治木一家だ。夫妻(佐野周二と轟夕起子)と長男、次男、親戚の娘の5人暮らし。周囲の言うことを聞かず、腕白坊主の次男の勝美(伊庭輝夫)は、初にも反抗的だったが、あることから2人の距離は一気に縮まる。

 勝美は家族にだまって物置小屋で、子犬を飼っていた。それが初に知られてしまう。初も犬が大好きだった。初は勝美が学校に行っている間、自分が面倒を見てやると約束した。勝美が子犬を飼っていることはやがて家族にばれるが、初は自分が責任を持つので、なんとか勝美に子犬を飼わせてやってほしいと頼み、事なきを得た。

 その前に、ちょっとしたトラブルがあった。勝美の母・梅子(轟)がクリーニングに出した大事なコートが家に戻ってきたのだが、いつの間にかなくなってしまった。勝美がコートを持ち出し、子犬の寝具として使っていたのだ。これも初に見つかり、勝美は「コートを捨ててしまったらいい」と言う。初は「そんなことをしてはだめだ」と、コートを引き取った。

 初は正月休みでの帰省から加治木家に戻ってきた時に、そっと梅子の箪笥の中にコートを入れたのだが、初が戻ってきたのと同時に、コートが見つかれば、当然、犯人は初と疑われてしまう。梅子も初の仕事ぶりを評価し、信頼していただけに、「まさか初とは」と残念がる。初にとって、加治木家の居心地はよく、まだまだ仕事をしたかったが、決して勝美がコートを持ち出したとは言わず、すべてを被って家を出ていくのだった。

 故郷に戻る初は、その途中に、勝美の小学校に立ち寄った。勝美は初の事情を一切知らず、初に「学校には来るなよ。みんなから『女中ッ子』て言われるじゃないか」とにべもない。悲しそうな顔をする初だが、勝美はすぐにニコッと笑い、手を振った。初も安心したように笑顔を返した。これが2人の別れとなった。

 この厳しめのラストが感動的だった。左幸子は「女中ッ子」の演技で評価を高めたらしいが、本当に素晴らしかった。子供たちの描き方も秀逸で、映画として完璧な内容だったと思う。


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佐藤安律

Author:佐藤安律
(さとう・やすのり)
ジャーナリスト。1965年生まれ。大阪市立大学法学部卒。産経新聞記者として20年7カ月勤務し、政治部、夕刊フジ、大阪経済部などに所属。政治部では、厚相時代の小泉純一郎元首相、元自民党幹事長の野中広務氏らを担当した。産経新聞の年間連載「こども大変時代」で、取材班としてファイザー医学記事賞優秀賞を受賞。2011年8月からフリーランス。大阪市在住。得意分野は政治全般、日本映画、医療問題。原稿の依頼などコンタクトはyasunori7373@yahoo.co.jp

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